「ジャワ舞踊のジャンル(1)」 2005年12月8日更新
冬の到来ですね。本当は冬眠してしまいたいですが、今月も少しずつ練習と公演を続けて行きたいと思います(ジャワ舞踊はゆっくりと体を温めるので、とても冷えに良く効きます)。
10月にレクチャー公演を行いました。踊り5曲、プラスお話、という盛りだくさんのプログラムだったのですが、話の内容が支離滅裂になってしまいました。しかも今回試みた「踊り分け」というテーマはあまりにも深すぎたことと(私も再勉強していくうちにかなりの無理を感じていました)、限られた時間でこの広範囲にわたるテーマをカバーする、という荒業をやってのけるには経験が足りなすぎたことが災いして、結果として、話したい内容の表面をかすった程度に終わってしまいました。当然ながら後からいろいろご意見、ご質問をいただきました。ジャワ舞踊の基本的知識を伝えていくことの大切さを痛感しました。ということで、この場を借りてジャワ舞踊について、簡単なお話をしたいと思います。
ジャワ舞踊にはさまざまな種類のジャンルが存在します。その「出身」から見ると、王宮の由緒高いサラブレッド的な踊り(スリンピー、ブドヨ、など)、それから民衆の生活や村々の儀式などから発展した踊り(ガンビョン、ボンダン、など、または舞踊劇など)、に大別できます。しかし時代が進むにつれて宮廷は民衆の踊りを取り入れたり、それからヒントを得たりして、新しい宮廷舞踊を開発していきます。この良い例は、マンクネガラン王宮が民衆の舞踊であるガンビョンを積極的に取り入れ、宮廷舞踊までに昇華させたことがあげられます。1950年代に、マンクネガラン王宮は「ガンビョン・パレアノム」を創作、発表すると、ソロの舞踊界に大きな衝撃を与えたと言われます。このような、いわゆるハイブリッドの踊りの数々も、現在では古典舞踊のレパートリーに含まれています。
踊りのテーマから見てみますと、舞踊劇の一部のシーンを舞踊化したものには、さまざまなテーマが見られます。「愛と戦い」は大きなテーマの一つです。我々の踊りのレパートリーの中の「レトノ・ティナンディン」や「ユド・アスモノ」などの舞踊が代表的なものです。またガンドルンと呼ばれる踊りの種類は、恋する男性キャラクターの悶々とした思いを伝えるもので、これも非常に人気のあるレパートリーです。「ガンビール・アノム」や「クロノ・トペン」がこの種の踊りの代表格です。そのほかには、日常的なしぐさを取り入れた踊りも数多く見られます。「ガンビョン」や「ゴレッ」の中にも身だしなみを整えたり、お化粧をしたりするしぐさも取り入れられています。1950年代に創作された舞踊「タリ・バティック」は、バティックを作る工程を踊りで再現したものです。
宮廷の踊りには物語性のあるもの、ないものの両方が存在しますが、上に述べた踊りの数々とは幾つかの点で異なります。まずは、それらがエンターテイメントではなく、心身の鍛錬であったり、瞑想であったり、その神聖さによって王に権威を与えるため、などの目的を有する、という点です。観客の集中力や好みを考慮していないため、踊り一曲一曲が長いことが特徴です。慣れない人にとっては延延と続く踊りにあくびが出てしまうこと間違いないでしょう。また動きの面から見ると、それが抽象的であったり、高度に様式化していたり、簡単に言うと難解な踊りの種類と言えます。
あえて日本の芸能にたとえてみると、民衆の舞踊から発達した踊りは「歌舞伎」のようなもので、王宮の踊りは「能」に匹敵するのではないかと思います。


