ジャワは比較的水の豊富な場所だ。特に私が住んでいた中部ジャワは雨量も多く、水が豊かだ。今回日本で起こったような断水は、ジャワではまったく問題にはならない。なぜなら都市部では水道が発達しているものの、多くの人はいまだに井戸を利用しているからだ。しかし良いことばかりではない。そもそも東京などの都市部で井戸水が飲料用に使われないのは、水質汚染の問題があるからだ。つまりそれなりの理由があるのだ。ジャワの井戸は、専門用語はわからないのだが、ただ穴を掘っただけの井戸だ。以前確かカンボジアで井戸を掘っている日本人のドキュメンタリーを見たことがあるが、この人は(私の記憶が正しければだが)確か60メートルくらいの深さまで掘らないと、きれいな水は出ない、と言っていた。これは地層の構造にも左右されるだろうが、雨水などの地表からの水が、岩石によってろ過され、深ければ深いほど良い水が出る、ということだろう。話は飛ぶがハワイの水は多孔性の火山岩によって、100年間もかかって自然ろ過されているので、まったく化学薬品で処理することなく飲料水として使えるそうだ。もちろんおいしい。
さて、ジャワの井戸の水はこのろ過のプロセスを経ていないので、大気や土に含まれる不純物をも溶かして井戸に入る。ジャワの水の水質調査をしてみたいが、結果を見るのは怖い。でも、日本の技術を使って、ジャワの人々に清潔な水を飲ませてあげたい、これは私の夢の一つだ。政府も個人で掘る井戸に対しての規制はほとんど行っていないし、水質調査も特に問題が起こらない限り行われない。
井戸の水を汲むためにはバケツか電気ポンプを使う。最初にジャワに言った時には都市部でも水道が発達していなかったので、バケツで井戸の水をくみ上げていた。これは良い腕の運動になる。電気ポンプは「サンヨー」と呼ばれ(これはメーカー名であろう、英語でコピーすることをゼロックスする、というのと同じか?)最近ではほとんどの家で使われている。水道が通っている家でも、井戸を埋めてしまうことはあまりない。
インドネシアの水の使い方は日本と根本的に違う。水道があっても日本のように各家庭にいくつも蛇口があるわけではない。なので、一つか二つの蛇口からバクと呼ばれる水の貯蔵場所やバケツに水をためて、それを洗濯や食器洗い、また飲料水としても使う。まさに広島市民が強いられているようなやり方だ。日本では洗濯も、脱水も機械がやってくれるが、インドネシアではまだまだ洗濯機の普及率は低い。普通の家庭では手で洗う。最初にインドネシアへ行ったとき、熱い国なのに化繊の洋服を着ている人が多いことに驚いた。でも手で洗濯してみて、その理由がすぐにわかった。洗うもの簡単だし、乾くのは早い。反対に大変なのがTシャツ。ジーンズにいたってはNG。水を含むととても重いので、洗うのも、絞るのも大変。そして雨季になると乾かない。
毎日井戸水を汲んで、そして手で洗濯をしてみて、水の大切さが少しわかったような気がする。日本のように上下水道が整備されていて、しかも蛇口をひねるだけで水が出、その上、その水を煮沸することなくそのまま飲める。この当然のことが可能なのは、ほんの一握りの国に過ぎない。しかも清潔な水を確保できなくなる国々がこれからも増えるという。これが紛争の原因を作り出すのではないかと危惧されている。人間の生活には欠かせない水だけに、もっと考えなければならない問題だ。


